【師子王の心】
どんな苦難にも立ち向かう勇気
民衆救済のために戦う仏の生命を師子王(獅子王)に譬えています。
この「師子王」とは、ライオンのことです。
師子王の心とは、何ものをも恐れぬ心です。
ライオンは、あらゆる獣のなかの王者ですから、いかなる獣を恐れることもありません。
この「師子王の心」が「仏の心」であり、妙法を保った人の胸中にある仏界の生命なのです。
日蓮大聖人は、百獣の王である師子が、安心して、どこへでも自由にいけるように、妙法を保った人は、一切の苦難を乗り越え、何も恐れない人生を送ることができる、と仰せです。
つまり「師子王の心」とは「仏の生命」のことなのです。
本来、だれの生命にもある「仏界」のことです。
仏界とは、自身の生命が宇宙を貫く根源の真理と一体であることを悟った生命境涯です。
また、万人に慈愛を注ぐ広大で豊かな境涯です。
そして、仏は、その限りない慈悲と智慧を自身の生命に顕し、その力で万人に自身と等しい仏の境涯を得させるために、どこまでも戦い続けていきます。
広宣流布に戦う日蓮大聖人の生き方そのものです。
仏の振る舞い、すなわち仏界を顕した人間の行動とは、具体的には、どういうものなのでしょう。
端的にいえば、それは、大聖人の佐渡での御振る舞いに示されています。
当時、ほとんどの人が生きては帰れなかった流罪のなかでのことです。
そのなかにあって、万人の成仏への道を確立するために、大聖人は御本尊を顕されます。
そして、御自身が末法の万人を救う仏であることを宣言された「人本尊開顕」の書である「開目抄」、ならびに、御本尊を保つことによって万人が成仏できることを明らかにされた「法本尊開顕」の書である「観心本尊抄」を著されました。
それだけでなく、さらに大聖人が、鎌倉をはじめ遠く離れた地で迫害や苦境と戦う門下に、信心の激励を続けられたことはいうまでもありません。
最悪の環境のなかで、大聖人は悠然と民衆の幸福のために戦い続けられたのです。
どんな迫害の中でも、御自身が「師子王の心」で戦われたと大聖人が仰せです。
御書
「悪王が正法を破滅させようとするのに対して、邪法を奉ずる僧らが結託をして、真実の智者を亡き者にしようとする時には、師子王のような心をもっている者が必ず仏に成るのである。例を挙げれば、日蓮のようなものである」
勇気の信心を奮い起こして広布の前進を阻む悪と戦っていく人は必ず成仏できるとの仰せです。
また、大聖人の御在世のなかで、門下が直面した最大の迫害が、熱原の法難でした。
駿河国(静岡県)の富士方面で日興上人が中心となり、折伏・弘教が進められ、天台宗などの僧・信徒が相次いで改宗するようになりました。
しかし、そのために、熱原郷の竜泉寺では住職代理の行智が策謀して、大聖人の仏法を実践する農民信徒を脅迫する事件が起こりました。
権力は新しい民衆の台頭を恐れ、大弾圧を画策したのです。
弘安二年1279年9月21日のことです。
熱原の農民信徒二十人が、無実の罪で逮捕され、わざわざ幕府の要人である平左衛門尉が、自ら鎌倉で厳しい取り調べを行い、法華経の信心を捨てるよう脅すのです。
しかし、農民達は信心を貫き通し、決して屈しませんでした。
そのため、十月十五日(一説には翌年4月8日)、神四郎、弥五郎、弥六郎の兄弟は処刑され、残りの十七人は追放処分に遭ったのです(熱原の法難)。
この時、大聖人は、次のように励まされています。
御書
「日蓮門下の一人ひとりは、師子王の心を取り出して、どんなに人が脅してもひるむことがあってはならない。師子王は百獣を恐れない。師子王の子もまた同じである」
大聖人と同じ「師子王の心」、すなわち勇気の心を奮い起こして、迫害に打ち勝っていきなさい、との仰せです。
その教えのままに、牧口先生は民衆を戦争の悪へと追いやっていった日本の国家神道を精神の支柱とする誤りを明快に訴え抜かれたのです。
「師子王の心」である仏界とは、何があっても動じない「安心立命の境涯」でもあります。
信心によって、ほとばしり出る勇気の心で、広宣流布へ戦い続ける生き方のなかに、何ものにも壊されない仏の境涯が、開かれていくのです。
大聖人は、熱原法難の渦中において、次のように門下を励まされています。
御書
「各各師子王の心を取り出して・いかにひとをどすともをづる事なかれ、師子王は百獣にをぢず・師子の子・又かくのごとし」
いかなる嵐にも、迫害の大波にも、決して恐れない。
「師子王の心」で進んでいく、これこそ大聖人門下の精神であり、仏法の伝統精神であります。
牧口先生は「いくじのない生命を、強く、清くするのが信心である」と仰せでした。
信心は臆病であってはならない。
臆病では「成仏」を勝ちとることは絶対にできない。
大切なのは、勇気であると。
何ものをも恐れぬ勇気こそ、まことの信仰者の証といっております。
【師子王の心】
どんな苦難にも立ち向かう勇気


